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高橋健

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⬛短編小説集『支店長、大変です!』🎖️日本自費出版文化賞特別賞🎖️いわき民報ふるさと出版文化賞特別賞🎖️吉野せい賞奨励賞受賞作収録  ⬛短編小説『メビウスの輪』🎖️銀華文学賞佳作

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@K_Takahashi_I
高橋健
2 years
🦁\拡散お願いします!🍆/🦁 💮Kindle価格値下げ⤵️🈹 【¥440(50%OFF)】(^o^) ◼️短編小説集  『支店長、大変です!』 *️⃣とても面白い‼️ 🍅第25回日本自費出版文化賞特別賞受賞 🌽第15回いわき民報ふるさと出版文化賞特別賞受賞 🥑第42回吉野せい賞奨励賞受賞作品収録
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣3️⃣  パドックでオグリのひ孫の元気な姿を一目見たいと思ったが叶わなかった。  人波に弾き返されるように場内に戻った。  建物に入ろうとする瞬間、パドックの端にメリーゴーランドが回っているのが見えた。馬繋がりだ。移動式遊園地か。バイキングもある。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣5️⃣ 「わかりました。お金はすぐ準備します。テラーズマシンを開けるのに役席の鍵が必要ですので、役席を呼んでもよろしいでしょうか?」  荒川の質問に男は答えず、胸ぐらに忍ばせた銃のようなものの先端でジャンパーの裏地を2回突ついた。 1️⃣5️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】 #拡散希望         アホのナカダテ 1️⃣ それは本当にアホな行員だった。  中館翔平。33歳。独身。泉が森支店の営業課の係長だ。  泉が森支店はA地方銀行の首都圏近郊の支店だ。花岡市にある。A銀行では中の上の規模の支店だ。 「アホのナカダテ」そう呼ばれ た。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣5️⃣  S商事の資金注入額は粉飾額と同じ20億円だ。  ヤマト物産の資本勘定に一旦計上のうえD銀行とA銀行からの借入金の返済に充当する。  その後に両行がS商事に同額を融資する枠組みだ。  ヤマト物産への貸出金が超優良S商事に振り替わる。
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣0️⃣ 「さすがにこれは危ないっしょ。やりすぎっすよ!」  想定外の行動に固まった男からナカダテが難なく拳銃を奪った。  ナカダテが射撃のポーズで体をぐるり回した。  ナカダテの回転に合わせて行員がドミノ倒しのように身を伏せていく。 2️⃣0️⃣
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高橋健
1 year
#読了 優駿(下)/宮本輝  サラブレッドを巡ってさまざまな人生模様が昭和セピアに彩られ描かれます。  多数の視点が物語の軸をぶらす感がありました。  答えはあとがきにありました。 「一頭のサラブレッドとそれを取り巻く人間たちのどのように辿って行くのか予測のつかない道」  なるほどです。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣5️⃣  自分たちの営業に関係ない話を聞き流しながら、ナカダテと高井が小声で話し始めた。 「貸出金の増強ったって、借りてくれる先なんかありませよ。運転資金でさえつき合っちゃくれません。まあ中館さんの銀行は違うでしょうけどね」 2️⃣5️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 4️⃣8️⃣ 『想念依存』だ。  この世にありながら会いもせず話もしない人間同士より、想念を強く抱く者の方が存在の接着度は高い。思いの強さが存在意義の強弱に連動する。  相手を意識しないのは存在しないのと同義だ。  存在は相手を意識する想念に依存する。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 4️⃣0️⃣  小さい頃の村上をナカダテから聞かれて、 「どうだったって漠然と聞かれてもね」  女将が考えあぐねる。 「…ずっと委員長はやってたね」 「やっぱり支店長には長が付くんですね」 「…そうそう。小学校2年の時かな」  女将が言う。 4️⃣0️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテㅤ完  車のハザードランプが5回点滅した。 『ア・イ・シ・テ・ル』のサインじゃなくて、 『ア・リ・ガ・ト・ウ』の意味なんじゃ?   誰かが言う。 「何がありがとうだ。ありがとうございます、だろーが。全く最後まで敬語もできないやつだ」 4️⃣5️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣1️⃣  判断の基準や目のつけどころがズレているというか、音程が狂ったまんまに1曲を歌い終えてしまう、本人に自覚はない、そういう類いの人間だ。  性格は悪くない。ナカダテが生理的にダメでなければそこそこの人間関係を築くのは可能だ。 1️⃣1️⃣
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高橋健
11 months
【詩】     #戦争はなぜ起きる 戦争とは陣取り合戦だ  人類は常に自分の領土の拡大に躍起になってきた 人類の歴史は戦争の歴史だ 人類がわが身で地球を捉えた500年前 マゼランが世界就航を果たした時から 戦争は地球規模に広がった 地球をターゲットにした陣取り合戦が始まった
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣4️⃣  尻を引っ叩かれるのはアホのナカダテも例外ではない。  本人が痛みを感じているかはともかく、期末の特別の雰囲気はアホのナカダテにも伝わってくる。  即実績化される個人獲得目標もある。期末日まで窒息しそうなプレッシャーだ。 2️⃣4️⃣
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣4️⃣  2人組の強盗犯の大きい方は中肉中背だった。身長は170センチだった。  テラーの荒川が男の頭頂と正面出入口の赤色のビニールテープが同じ高さなのを目撃していた。  170センチは赤、180センチは青、160センチは黄色だ。 1️⃣4️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣3️⃣  東京競馬場のコースの特徴は距離だけではない。  距離ならオグリキャップが2度制覇した有馬記念の中山競馬場の方が長い。  東京競馬場の特徴は最終直線の、長さに加えた通称『だんだら坂』と呼ばれる上り坂だ。20万の視線が一斉に突き刺さる場所だ。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴3️⃣7️⃣  父は私にポニーを見せようとしたのか。  確かセンターの入り口付近にポニーの家があった。50年前にもあったかどうかは確認しようがないが…。  私は受付で渡された、4つ折りにして上着のポケットにしまっていたパンフレットを取り出した。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣0️⃣  大杉に気安く接するのはナカダテぐらいだ。副支店長の森山に至っては天敵のような存在になっている。 「あん?」  大杉がヤッサンのように顔を上げてくる。 「この残表おかしくないっすかね?」  昨年6月と12月の残表だ。 3️⃣0️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】     #アホのナカダテ 5️⃣  金庫外扉のダイヤル番号は支店長が交代したら変更する規定になっている。  ナカダテの前任店の支店長が交代になった。担当役席としてナカダテが業者のダイヤル変更作業に立ち会っていた。  ダイヤル番号をメモなどで持ち歩くのは厳禁だ。
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高橋健
1 year
#第25回日本自費出版文化賞特別賞受賞作品 【支店長、大変です!】     #アホのナカダテ 🔟  昨日の外訪への出発時など、 「行ってきまーす!」  勢いよく出て行こうとしたら、女子行員が開けたドアに派手におでこをぶつけていた。 「あ、ラッキー!」  と言葉を発して自席に戻っていく。 🔟
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣8️⃣  誰も女性だと直感さえしなかった。  新鮮な驚きであり模擬訓練は後味の悪さを残さず撤収となった。  くどいようだが署内から選りすぐられたような美人だった。  ただ山崎さんと渡辺業務役の2人の怒りは簡単には撤収といかなかった。 1️⃣8️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣3️⃣  季節は寒さの谷を下り切ったあと春へと向かっていた。  3月に入った。期末月だ。泉が森支店でも今期の仕上げに躍起だ。  地方銀行の最大の営業目標は貸出金の期中平残の増強だ。期中平残とは日々の貸出金残高の半年間の平均値だ。 2️⃣3️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 4️⃣2️⃣       ー最終週ー  指定の時刻を待って村上が封筒に鋏を入れた。辞令を取り出した。  副支店長の森山がキャスターを滑らせて椅子をこいでくる。  並んだ2つの顔が辞令を見つめた。 「どうしてー?」  森山が叫んだ。 4️⃣2️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣8️⃣  ユキが馬の制御に戸惑っている。  馬が走りたがっている。走らずにはいられないと馬が訴えている。  明らかに馬のスピードが上がった。“歩く”から“跳ねる”ににギアが切り換わった。  ちょっとでも気を許せば次の瞬間には走りだしてしまいそうな勢いだ。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣3️⃣  私たちが落ちていく先は東京から北東200キロの地点、福島県いわき市の『馬の温泉』だ!  いわき市の上空まで落下した。  馬の温泉の調教馬場が迫ってきた。  ナンダアレハ!  調教馬場の上空をぶっといトコロテンのような…?
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣8️⃣  シュン! いけー!  ゴールまで100メートルを切った。先頭とは半馬身差だ。  コマ送りのように差が詰まっていく。  クビの差まで迫った。ゴールまで4、50メートルだ。距離は十分だ。  先頭馬も必死に逃げ切りを図る。が、無理だ。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴4️⃣2️⃣  私が小学生だった昭和40年代後半、1970年代前半は日本経済が膨張を続けていた。  敗戦で焼け野原となった日本は驚異的な復活を遂げていた。  住宅団地が造成され、街にモノが溢れた。まるでパラパラ漫画を眺めるように生活環境が変貌していった。
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高橋健
11 months
【詩】        #母よ 死にゆく母よ 今にも途絶えそうな寝息をたてて眠る母よ 昭和の初頭に生を受け 激動の時代をたおやかに縫いながらも 地獄の底を這いずるようにして戦争の世紀を生きぬいてきた 母よ 私はあなたが涙を流す姿を見た記憶がない どれだけの辛酸を心に秘めてきただろうに
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣1️⃣  代表電話の末尾に1を足したのが夜間直通だ、という大杉の推論に感心しながらナカダテが電話をかけた。つながった。出たのは偶然にも高井だった。 『今日はどうも。こんなに時間にどうしました』  淡々とした高井の受け答えだ。 3️⃣1️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣1️⃣  私は東京競馬場に向かって歩いていた。  馬の温泉であの馬を見���から半年が過ぎていた。季節が2つ早送りされていた。  自分がどこにいるのか、即座には理解できなかった。馬の温泉から瞬間移動したようにシーンが変換されていたからだ。 #東京競馬場
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣6️⃣  誰もが防犯模擬訓練と勘違いしていた。  県境に近い泉が森支店では、1年おきに強盗を想定した模擬訓練が実施されていた。昨年などは予告なしに行われ支店内は大パニックに陥った。  2人の警察官が応接室で支店長と歓談していた。  1️⃣6️⃣
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@K_Takahashi_I
高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴4️⃣0️⃣  空間を支配するおまえは一体誰だ。  おまえが馬を使って私をここに呼び寄せたのか。  なぜ父の幻影を見せつける。  おまえは意志を持つ者なのか。何を目論む。  私は心の中で叫び続けた。 『過去を無にしてはいけない』  突然空から声が下りてきた。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣7️⃣  強盗役の2人の警察官が営業室���り退場したところで、 「はい、はい、皆さんご苦労様です。防犯模擬訓練は終了でーす!」  副支店長の森山が手ばたきしながら声を張り上げてきた。 「チッ、そういうことか!」 1️⃣7️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】     #アホのナカダテ 8️⃣  泉が森支店に新しい支店長がやってきた。  村上銀太48歳。3か店目の支店長で泉が森の出身だ。入行時の支店でもあった。  自分の地元の支店長というのはあまり例は多くないが、営業エリアが県に限定される地銀では決して珍しくはない。 8️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣7️⃣ 「それでもまだまだ貸出余力はあるんじゃないですか」  ナカダテが貸出金残高表を頭に浮かべながら言う。全取引金融機関の貸出残高が載っている、通称『残表』だ。 「ん?」  高井が怪訝な表情をした。  反撃するように高井が言う。 2️⃣7️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣8️⃣ 「3段ロケット」も加わった。  1日だけの歩行者天国を3日間のスプリングフェスとして衣替えさせたいようだ。 「弁当類はヤマト物産が一手に引き受けます」  どうやら自社の販路拡大が目的だ。  5時直前にやっと会議が終わった。 2️⃣8️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣2️⃣  副支店長の森山が送話口を押さえてナカダテに聞く。 「強盗犯はどうした?」 「捕まりました!」  森山はナカダテの言葉を送話口で繰り返した。 「捕まりました」 『ん?』  村上の疑問符を無視して電話は切られた。 2️⃣2️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣6️⃣ 「では当行も3月末実行で足並みを揃えましょう」 『それにしても粉飾が5年に及んでいたとはね。粉飾額が拡大したのは2年前にヤマト物産に産地偽装の疑惑がかかったのが原因ですが。これで父親の会長も経営への口出しは控えるでしょう』 3️⃣6️⃣
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣9️⃣  メガMZの残高も少なすぎる。撤退しているのか。  シェア割が崩れたのは1年近く前だ。ヤマト物産がコンビニから弁当類を一括受注した時期に符号する。  ナカダテの眼光がシャキンと鋭くなった。シャッキンではない。シャキンだ。 2️⃣9️⃣
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1 year
【支店長、大変です!】     アホのナカダテ 2️⃣  アホのナカダテが泉が森支店に着任した当初からそう呼ばれていたわけではない。  いつの頃からか樹木から新芽が吹き出すように呼ばれるようになっていた。  だがそう呼ばれるようになってみると妙にしっくりくる。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣3️⃣  泉が森警察署長の岩崎と村上が上座に並んでいた。村上は会長だ。各金融機関の支店長が出席している。 「村上支店長は最初の地金防ですね。前任の石川支店長には大変お世話になりました」  なぜか言外に嫌らしい圧力を感じてしまう。 1️⃣3️⃣
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣9️⃣ 「あら銀ちゃんいらっしゃい」  雅寿司の女将が暖簾をさっと割って入ってきた。  大将の「銀太さんいらっしゃい」という掛け声に思わず飛び出てきたふうだ。  結わいた後ろ髪を銀太の方に向けて2、3度持ち上げる仕草も見せた。 3️⃣9️⃣
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 4️⃣1️⃣       ー最終週ー  1時間で村上は雅寿司を後にした。直後に熱燗2本と握り寿司がカウンターに出された。 「頼んでませんけど」  ナカダテの問いに女将が答えた。 「それは銀ちゃんから。勘定も全部済ませていったわよ」 4️⃣1️⃣
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣8️⃣ 「俺が誰かを酒に誘ったのはこの支店ではおまえが最初だ。だが勘違いはするな。割り勘だ」  ゲッ、とナカダテが大杉を仰ぎ見た。 「上司が部下を酒に誘う時は上司が奢っていうのが…」 「誰が決めた」 「それが暗黙のルールなんじゃ…」 3️⃣8️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣0️⃣  向こう正面を軽やかに馬が疾走していく。ユキの手綱さばきにも余裕が出てきている。人馬が一体となって馬の温泉の調教馬場を駆っている。  ヨコタは小屋の2階から身を乗り出しながら走る馬と手元のストップウォッチに交互に視線を向けている。
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高橋健
1 year
ひとりでも多くの方に無料サンプル版だけでもお読みいただければ幸いです…❗(^o^)
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣7️⃣ 『A銀行さんと喧嘩はできませんな。これからもお手柔らかにお願いします』  ではまた、と言って藤田が電話を切った。  アホのナカダテが優秀ね…村上が胸の中でひとりごちる。  他行の支店長から部下を誉められれば悪い気はしない。 3️⃣7️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣5️⃣  コースの外周には生け垣が巡らされている。私が立つ位置からはコースの全容は見渡せない。  厩舎からコースへ抜ける通路と、通路右側の1箇所で生け垣が切れている。そこからコースが覗けた。  覗けるのは手前直線の中央付近3、40メートル。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 4️⃣7️⃣  空間からは何の答えも返ってこなかった。  さきほど頭の中に直接語り掛けてきた声は幻聴にすぎなかったのか。  だが…辻褄が合わないとは言い切れない。  調教馬場の空間を守る者が50年前に私と父の姿を目にしていた。  ここは時空を超える場所だ。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣1️⃣  ライナー性のボールが飛んだ。勢いが強すぎた。だがそこで逃走車が一気に加速したか。カラーボールがフロントガラスに的中した。逃走車がカラーボールを受け止めたようだった。 「ナイスキャッチ!」  ナカダテはガッツポースだ。 2️⃣1️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣4️⃣  ユキを乗せた馬がダートコースに入っていくのを確認してから、 「それじゃ親父さん、計測スタンバッテます…」  と、ヨコタはコース脇にある2階建の小屋へ向かった。  ヨコタが小屋の外階段を軽快なステップを刻んで駆け上がっていく。
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@K_Takahashi_I
高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 4️⃣3️⃣      ー最終週ー  森山が我に返って村上に聞く。 「どういうことでしょうかね?」 「どういうって、そういうことだろうな」  村上は平然としている。 「支店長、まさか人事部に推薦したんじゃないでしょうね」 「どうして?」 4️⃣3️⃣
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@K_Takahashi_I
高橋健
11 months
【詩】      #二十歳の君へ  人間の生は 価値あるものでもなく価値のないものでもない それが二十歳の君が得た答えだった それまでの君は人間の生の根源的な意味を一心に追求していた その答えを見い出せなければその後の人生はありえないとさえ思っていた 純真と言えば純真だった
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@K_Takahashi_I
高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣1️⃣  シュンの体から発射された筒状の気体が天空を一気に目指して上昇していく。  無機質な物体とは違う。ミサイルやロケットというよりは、螺旋を描く濃密な白濁した空気のうねりだ。 『千と千尋の神隠し』で竜に変身したハクの姿さながらだ。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣2️⃣ 「当行の残高は17億円です。御行の残高は18億円になっています」  高井が2度絶句するのがわかった。 『これは…』 「…残表操作です。他行の残高を減らして残表を作成する。残表を配布する先の残高は真正ですが他行は減額します」 3️⃣2️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣4️⃣  A銀行が貰っている残表ではD銀行の貸出額は18億円だ。実際より7億少ない。  A銀行の実際の貸出額17億円がD銀行の残表では12億だ。5億少ない。両行で12億円の乖離が発生していた。   残表操作は古典的な粉飾決算の手法だ。 3️⃣4️⃣
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1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 4️⃣4️⃣      ー最終週ー 「ナカダテは将来私たちの想像を超えた大物になるかもしれない。その資質は持っているように感じるんだ」 「本物のアホね?」  森山は小刻みに首を振って否定していた。 4月、ナカダテが転出する日がきた。 4️⃣4️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 4️⃣9️⃣  ぱか…、ぱか…、ぱか…。  背後から迫る馬の大きな足音に、びくん、と跳ねるようにして振り返った。  空間を守る者に頭蓋を鷲掴みにされ無理やり回転させられたようだった。  1頭の馬が厩舎から調教馬場へ向かってくる。  その瞬間に空間が弾けた。
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1 year
【支店長、大変です!】     アホのナカダテ 3️⃣  係長はほぼ自動昇進の職位だ。入行後の8年間に特段の問題がなければ昇進が認められる。  地方銀行において最も注目される職位はやはり支店長代理だ。  支店長代理といっても支店長の次に偉い訳ではない。  支店長に次ぐ職位は副支店長だ。
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】     #アホのナカダテ 6️⃣ 「メモは厳禁でしょう!」ナカダテが言い放つ。 「ーそれは建前に決まっているだろうが。誰が2桁の6個の番号を二通りも覚えられるんだよ! ダイヤル番号どこかに控えてないのかよ?」 「控えてません!」  支店内が騒々しくなってきた。
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@K_Takahashi_I
高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣9️⃣  ギスギス音を立てシャッターが閉まっていく。白根さんがすまし顔で親指を突き出した。  現金の手配は進んでいない。  主犯の男がキレた。 「おまえら死にてえのか!」  男の手には拳銃が握られていた。 「パン」  乾いた音がした。 1️⃣9️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 2️⃣6️⃣  ふふっと笑ってナカダテが高井に合わせる。 「どこの銀行も事情は同じってわけですね。『借りてください!』『キャンペーン期間中です!』金太郎飴のような通り一遍の営業の時代は終わったってことですね」  会長の熱弁が続いていた。 2️⃣6️⃣
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】     #アホのナカダテ 7️⃣ 「まだ僚店には預けていないと思います」  ナカダテが僚店に行ってきた記憶がその役席にはなかった。 「な?」  ナカダテに確認を求めると、 「はい!」  ナカダテから明快な答えが返ってきた。 「じゃ、どこにあるんだ?」 #アホのナカダテ君
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 1️⃣2️⃣  景気低迷が長期化しているなか営業本部の目標設定は情け容赦がない。  そもそも営業本部は上しか見ていない。天の声には極めて過敏だ。支店は粛々と日々の業務に邁進するだけだ。  10月から翌3月の下期がいよいよ自分の本番だ。 1️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴3️⃣3️⃣  全てを喪失した父と、生きるために必要な物は与えられていた私とでは、人生のスタート地点が全く異なっていた。  自宅を飾る行為は少年時代の破滅の代償であり、父の人生の目的となったのかもしれない。  昭和39年に私は生まれた。 #常磐炭鉱の長屋
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高橋健
1 year
【支店長、大変です!】    #アホのナカダテ 3️⃣3️⃣ 「残表操作による債務の圧縮です」  大杉が確信を持った頷きを村上に見せた。 「大杉主任、君が発見したのか?」 「いえ、中館です」  そっか、鼻の脇をかいた村上が指示を飛ばした。 「D銀行の藤田支店長には俺から連絡を入れる」 3️⃣3️⃣
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@K_Takahashi_I
高橋健
1 year
【支店長、大変です!】     アホのナカダテ 4️⃣  係長になって委譲される権限は単純事務の検印と店舗管理だ。  権限が委譲されるというよりは単に責務が拡大するだけだ。  店舗管理に関しては、甲種重要鍵である店舗通用口扉鍵や金庫中扉鍵を肌身離さず持ち歩かなければならない。
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高橋健
11 months
【支店長、大変です!】     #パパㅤダサい 1️⃣   地方銀行は1つの県を主な営業地盤とする。1地銀あたりの支店数は平均で100を超える。A銀行は180だ。  支店長は2年、一般行員は3~5年のスパンで支店間を異動する。地方銀行にとって転勤は組織統制上欠かせない特別な意味を持つ。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣7️⃣  ゴールまで200メートルを切った。  2番手の馬を抜いた。先頭とは一馬身差だ。距離はまだ100メートル以上ある。 『いける!』  加速が明らかに違う。ここからがこの馬の本領発揮だ!  いけー! いけー! いけー!  いけー! いけーーーーー!
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣6️⃣  ポコポコ上下している白いのは何だ、と思ったら騎手の尻だった。騎手は全員白い尻だった。  遠い。誰が誰、どれがどれだかさっぱり分からない。これでは単なるお馬さんの駆けっこだ。  5番はどこだ?  無音声の大モニターとコースを交互に見遣った。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣4️⃣  で、でかい!   だがよく考えれば当然だ。ここは馬の競技場なんだ。人の競技場とはスケールが違う。  単純に1周2,000メートルとしてホームストレッチは500メートルだ。人の5倍だ。  長さが5倍なら面積は25倍だ。でかい訳だ。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣5️⃣  車両のリフトで持ち上げられ旗を掲げたスターターがコース内の大モニターに映し出された。各馬がゲートに収まった。と思う間もなくスタートした。  ジャパンカップの決戦の火蓋が���られた。  だが場内は静かだ。緊迫感に包まれていない。ど、どうした?
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣2️⃣ 「ヨコタよ、気持ちは分かるがそう焦っちゃいけねえ。血筋でケガは直せないからな」  期待感も��わに馬を見つめる隣の男をいさめるように親父さんが言う。 「そりゃそうですけど…」  高ぶる気持ちがヨコタの言葉を止めさせなかった。 #東京競馬場
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1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣2️⃣  私の足首がスタンドの手すりに引っ掛かったままだ。   私は試しにクイッと足首を伸ばしてみた。足が猛烈な勢いで戻ってきた。ホラ吹きウソップの武器『パチンコ』のゴムが跳ね返ってくる激烈…!  バチッ! 強烈な勢いで下半身が元の長さに収まった。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣6️⃣  背後から威圧する視線を感じた。私の体を貫かんばかりの圧がある。恐怖に怯える心持ちで私は体を反転させた。  黒ずんだごつごつした石の像が佇んでいた。  目を凝らすと「馬頭観世音菩薩」の文字が読み取れた。 『あなたが空間を守る者…ですか?』
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴3️⃣6️⃣  もともと馬道(うまみち)には貨車軌道が通っていたのではないか。石炭を運ぶ鉄道だ。  ハワイアンセンターの先から湯本駅まで石炭を運んだ。鉄道の前は馬車道だろうか。  馬の背のような高台の南の裾を通した。北は人が往来する御斉所街道だ。  #常磐炭鉱
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高橋健
1 year
#読了 優駿(上)/宮本輝  手前味噌ながら #夜ノベ と称して #サラブレッド を題材とした連載小説を平日ツイートしています。 『優駿』は吉川英治文学賞受賞作品です。サラブレッドを軸に様々な人間ドラマが綾なされていきます。  サラブレッドの情感と人間の生の悲哀が融合した作品です。 傑作です。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣0️⃣  一瞬静寂が支配したスタンドは、地獄の底から湧き上がるような無数の悲鳴に覆われた。 『シュンが死ぬ!』  黒っぽいスーツ姿の2人の男がシュンに駆け寄った。  2人の男がモニターにクローズアップされる。  覗き込むようにしてシュンを観察する。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 8️⃣0️⃣       ー最終話ー  蹄鉄が入っていたビニール袋から、そよ風に舞いながら1枚の紙切れが落ちた。文章が書かれていた。 『~蹄鉄は幸運のお守り~  蹄鉄は幸運のお守り、魔除けになると言われています。鉄尾(口が開いている方)を下向きにせず、
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴4️⃣4️⃣  昭和が平成に変わった年、昭和64年の6月だった。  父が発電所の外階段の5階から転落した。  頭がアスファルトに叩きつけられた。頭蓋が砕けた。即死だった。風の強い日だった。  ヘルメットが父の生き様の欠片のように別の建屋の下に転がっていた。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴3️⃣4️⃣  私はJRA競走馬リハビリテーションセンター『馬の温泉 』にいる。  馬の温泉からスパリゾートハワイアンズまでは約3キロの距離だ。  私が幼稚園児の頃、ハワイアンズの前身の常磐ハワイアンセンターに父の車でよく行った。 #常磐ハワイアンセンター
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1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣9️⃣  ユキを乗せた馬が親父さんが立つ小屋の前を駆け抜けていく。 『早すぎる!』  親父さんの心の声が聞こえた。 『この馬がここに運び込まれてからまだ3か月しか経っていない。立つのもやっとだった状態の馬がどうしてここまで復調するんだ。あり得ない!』
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1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣7️⃣  ナミアシでコースを2周回った。  競走馬の歩行姿に私の目が馴れたからではないだろう。明らかにペースが速くなっている。 「親父さん、調子いいっていうレベルじゃないですよ。どんどん前にいきたがってます。もうナミアシじゃ無理です」 #ハヤアシ
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高橋健
1 year
#第25回日本自費出版文化賞特別賞作品 【支店長、大変です!】     #アホのナカダテ 9️⃣  村上の出身大学は慶応だ。ナカダテも同じく慶応だ。  東大だろうが早大だろうが慶大だろうが、アホな出身者はどこの大学にもいる。  村上も後輩には親近感を覚える。後輩がアホ呼ばわりされている。 9️⃣
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣2️⃣  東京競馬場の中は洗練された華やかさで溢れていた。  飲食のショップが軒を連ねている。いずれも今時の人気のファストフード店だ。  女性の姿が目立つ。若いカップルも多い。  競馬新聞を持ち赤鉛筆を耳に挟んだオヤジたちが闊歩している光景ではない。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴3️⃣8️⃣  場が異様だ。  私は時空を貫くタイムトンネルでも通して50年前の世界を覗こうとしているのか。  50年前に私はまだ30代の父と馬の温泉に来た。  ポニーにはしゃぎ、一番奥の調教馬場まで進んだ。父と並んでサラブレッドを見た。  #調教馬場
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣6️⃣  騎手のユキはまだ20代前半だろう。女性の調教師は珍しいかもしれない。  だが若かろうが何だろうがプロだ。馬を数10歩も進ませれば全身に伝わってくる感覚で馬の調子を把握できるはずだ。  ユキの表情は馬の調子の良さをはっきりと物語っていた。
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1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 6️⃣9️⃣ 『なぜだ?』  ゴール目前でシュンが転倒した。クビの差の先頭馬をかわして1着でゴールするのが確実だったはずだ。 『何が起きた?』  シュンが転倒した直後に1着馬がゴールを駆け抜けた。  あっという間に全馬が雪崩を打ってゴールした…🏇🏇🏇🏇🏇。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣0️⃣  父が視線を変えた。 「ユキー、ゆっくりいくんだからな。決して急ぐなよ!」  馬上の騎手に向かって叫んだ。騎手は若い女性だ。20代前半だろう。  だが…その声は父ではなかった。  外見は父そのものだが声は違う。やはり父ではないか…私は思った。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴4️⃣5️⃣  父は時代に翻弄されて生きた。  敗戦から高度経済成長へ、戦争の破壊が甚大だったほど反動も激烈だ。  時代が戦争という暗黒の記憶の消去に必死だった。  父は時代のうねりに揺さぶられ続けた。  私は昭和39年に生まれた。 #東京オリンピック1964
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴1️⃣6️⃣ 「だから…」   女性は必死に笑顔を取り戻そうとしていた。  泣き笑いのような表情だった。  気丈にも話を続けた。 「あの馬たちは殺処分を免れ、走らないことで自分の居場所をつかみ取ったんです。乗馬馬としての人生をね」  そこで女性が話を切った。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴4️⃣3️⃣  高度経済成長を支えたのは父たちの世代だ。  少年時代は地獄を這いずり回り、社会に出てからは企業戦士として身を粉にして働き続けた。  生き方を考える余裕もなかった。  やっと生活にゆとりを持てた時には父は50代になっていた。  #玉音放送のあと
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 4️⃣6️⃣  私は父の享年と同じ年齢になった。  私の記憶によく残っている父の姿は、発電所からの帰路、角を曲がって歩いてくる、晩酌のビール1本で酔って親父ギャグを飛ばす。小さい頃いわきの地を父が運転する車で回った。  50年前に馬の温泉にも来た。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣8️⃣  馬頭観世音菩薩が青空を見上げたような気がした。  それ以上はなぜか菩薩の声も聞こえないように思えた。  私は馬頭観世音菩薩に軽く一礼して調教馬場へ振り返った。  シュンがゆっくりと歩いてくる。穏やかな春の日差しを全身に受けて輝いている。
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高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣5️⃣  あれっ? ユキは自分が宙に浮いたような錯覚を感じていた。  生け垣に隠れる寸前に跳ね上がったシュンが消え、生け垣を抜けようとする間際にシュンが再び現れた。  急停止したようなシュンの首にとっさにしがみつかなければ落馬するところだった。
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高橋健
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【連載小説】     走らない馬🐴 5️⃣1️⃣  オグリキャップの血を引く馬がいわきの山の中で療養していた。目の前にいた。  思い出した。  オグリキャップ自身が過去にここで療養していた。受付の壁に馬名を記した札が掲示されていた。30ほどあった札の中で真っ先に私の視線を捉えた馬名だった。
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高橋健
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ㅤ東京競馬場の名物だ。大学生の箱根駅伝なら2区の『権太坂』といったところか。違うか…! 『だんだら坂』を制する馬が勝負を制する。  中山よりも東京競馬場の方がこの馬の強みを引き出せる。 『だんだら坂』を一気に走り切る。いや飛び抜ける。  その光景が一瞬私の脳裏にも描けた気がした。
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@K_Takahashi_I
高橋健
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ㅤナカダテの車が徐々に遠ざかっていく。満開の土手の桜がナカダテの車を見送っていた。  無数の桜の花びらたちが、アホのナカダテの将来を、ぼんやりとだが寿いでいるように村上には見えた。 #完 【支店長、臨月です!】 #ホテルで二人は抱き合っていたㅤ葉月の心には小糠雨のような涙が流れ続けた
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@K_Takahashi_I
高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴2️⃣7️⃣  事務所の反対側に案内図が掲示されていた。200メートルほどの見学路が通っている。 『馬の温泉』の主な施設は、馬のプール、温浴場、ウォータートレッドミルなどだ。  温浴場は源泉かけ流しだ。馬は立ったまま温泉に浸かる。
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@K_Takahashi_I
高橋健
1 year
【連載小説】     走らない馬🐴 7️⃣9️⃣  シュンがぷりぷり怒っているような。何かまずいこと言ったか。  シュンの後ろ姿もどこか毛羽立って見える。シュンを怒らせるツボをプチっと押してしまったか。  ん? ふと思った。もしかして…。  シュン、おまえはヒーローじゃなくてヒロインなのか?
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